(基本メンテを見直そうNo5)

エンジン焼付き 
 実はこのページは2000年8月にUPしたもので、焼きついた写真が欲しくて引っ張り出してきました。 以前は月単位でup/delete繰り返していたのでご存知ない方もいるでしょう。  文章も変更しておきます。
  焼き付き具合にもよるが軽ければ2St(st:ストローク)・4stともシリンダーやピストンに縦溝が出来る程度で 済むが酷いと2ストロークはピストンに表面に穴があき、走行時違和感を感じたり、極端にトルクがなくなる。  4ストロークはバルブ折損などでカムチェーンもロックされる為、急制動が勝手にかかるようなものでコーナーの立上がり等で起きると大変危険である。 排気量が大きくなり軽量化されてきている最近のピストンは極端にねじれの力に弱いためスカートがくだけ腰下のギヤ・ベアリング部へ損傷を与えることもある。 また多気筒エンジンで1気筒が軽い焼けの場合気が付かない人もいる。 縦傷が出来ていればOilが上りで排気が普段よしろかったり、プラグの場合表面がかぶっていたり、すすが付いているため比較すれば違いが解るはずである。2stだと解りにくいので正常な状態の記録をセッティングを変える前に取っておくべきだ。 運良く車体を安定させ止まれてもエンジン内のダメージは大きいことはわかってもらえただろう。
 どちらもミッションオイルが燃えているようでススだらけですね。 オイル上がりは直キャブで砂が入って起きた物・バルブ折損は購入して何も手入れせずに積み替えて起きた物です。 これらを見るとメンテナンスの大切さを実感しますよ。 必ず原因があって症状が出てきますので日頃からセッティング状態と現状把握ができておれば故障時の判断もつきますし、未然に防ぐことも不可能ではないと思われます。
 無知なセッティング・手抜きメンテでいろんな見本ができますよ。 こんな見本は皆さんには作って欲しくないので、乗るだけのバイクは卒業し、整備の楽しさや奥深さを知って欲しいです。

お客さまの貴重な経験談@
 私のGooseですがエンジンが吹っ飛びました! バランサーがケースを突き破り、オイルクーラーに刺さってます。 高速で調子こいた結果でもあったのでしょうが、レブリミッターは一度も効かせてないし、まして、10、000RPM以上は極力回さないように、心がけていたのに・・・。 慣らしは、完成から集合時間まで気合で走りまくって高速の集合場所まで、これまた気合のトロトロ運転! たったこれだけがいけなかったのでしょうか? でも、この仕様良いですね、平地でメータ読みですが190kmは出ます。 一緒に行った、国内リッターをバビュンと置いて来れます。 結局時間の関係上、シャフトは取り付けを見送ったのですがGooseは相変わらずよれました。2002.10.7
 この方は今もGooseオーナさんです。(笑) 素晴らしいでしょ。 余りにも衝撃的でHPに載せるか迷ってました。 実はこの方に中古のクランクケースを販売し、shopで組み直してもらったのですが、私が配送してから3日程度のことだったのです。 あまりにも儚いです。 GooseやDRのエンジンは雑誌TWOM'Sで紹介されていた通り、軸間を詰め、クランクケースも極力軽量化に努めたエンジンです。  他社ではバランサーを後ろに持っていったりギアトレーン内でつながっていて、先に歯が折れる場合が多いのですがGooseの場合はクランクシャフトの剛性の高いギアを直接返して真前に配置されたバランサーを駆動しているため、ピストンが焼きついてクランクシャフトが急停止した場合、バランサーの慣性は大きく(速度に比例)力はシャフト自体で力の分散を図ろうする。 バランサーの剛性>アルミのクランクケースの剛性であり、相当事故時もスピードが乗っていたのだろう(推測) だから飛び出した原因は理解できる。 焼きつきは長時間の高回転維持によるシリンダー・ヘッド周りの油切れが疑わしい。 バランサーがフレームを突き破ってオイルクーラーに刺さるのは二次要因だろう。

お客さまの貴重な経験談A
 当初はバランサーの破損が原因でケースが割れたのかと思いましたが、どうやらビッグエンドの破損のような気がします。
 まずは、お悔やみ申し上げます。(メールで)  しかし、貴重なデータは活かさしていただきますよ。 お客さまの貴重な経験談@のお客さまと近い状態ですね。 このオーナーさんは知識も豊富な方なので故障解析が終わっていると思われます。 ここでは3枚の写真から何が推定できるか見ていきましょう。 1番上の写真:コンロッドのビックエンドが割れ抜け、 バランサーがクランクケースを突き破って外に出た状態ですね。 故障直後(破損後)から写真を撮るまでエンジン内部は余り動いていないかもしれませんね。 と言うのもピストン位置が上死点に近いからです。 コンロッドが折れやすいのは引張りの力がかかった時だからです。 2枚目の写真:見た目では判り難いですがコンロッドのビックエンドは割れているのですね。 しかし、ビックエンドが割れたことでスリーブが割れるか?…割れるだろう。 正常な状態でコンロッドの動きを考える…尾を掴んだうなぎがすごいスピードで逃げようとする感じだ。 尾を離したとたんに手から離れた尾には反力が加わるだろう。 ピストンが上死点に近い所にあったからスリーブが割れたとも判断しやすい。 よく見るとスリーブにも線が見える。 シリンダー内の焼きつきもあっただろう。すんなりコンロッドが折れたならクランクシャフトは惰性で回り、バランサーは飛び出ないのではないだろうからだ。 写真は ピストンリングの張力もあるがクランクシャフトの位置から考えると故障時よりピストンが若干下がっている程度に思われる。 ピストンのスカートが砕けず見えていることから故障時はピストンはもう少し上の位置だと推定できる。 また、バルブも曲がってます。 コンロッドが折れてピストンは上死点位置だが、クランクシャフトは回転できる状態にある。 バルブが駆動すればピストンに当たり、バルブは曲り、ピストンは押される。 このせいかもしれない。 3枚目の写真:クランクケース左側バランサーベアリング部断面は若干上向きではあるものの、前方に力が働き割れたことを示しています。 これはクランクケース右側バランサードライブギアがクランクシャフトのロックにより、クランクケース左側バランサーベアリング部に慣性力(バランサー本体にはねじりの力)が働いた物と思われる。  主原因はわたしもコンロッドだと思います。(ただし、シリンダー焼付きが認められた場合、シリンダー・カムシャフトがこけしのように削れていればヘッドの潤滑が推定できる) コンロッドが赤茶に変色しているように見えます。 コンロッドを替えてもバランサーは飛び出ていたでしょう。 潤滑と熱処理が一番始めにするべき対策だと思われます。 サーキットでは出来るだけミッションオイル量も減らしたいところですけどね。 ノーマルのレギュレーションでもオイル通路を広げたり、段差やバリの除去はしておきたいですね。 ヒートポイントを出来るだけ作らないこととフリクションを減らすことが大きな鍵です。 
<情報2>
  1. ヘッド周りは磨耗が多少有るもののシリンダー及びピストンに焼付等は一切無くいオイル関連のトラブルはありませんでした
  2. ウエットサンプのエンジンの場合攪拌抵抗を嫌いオイルレベルを低めにしたりする人もいるようですが、ドライサンプなのでクランクケース内のオイル量はオイルポンプの突出量により決定されると思い、冷却面の優位性を考慮して、ウエットサンプのエンジンの場合攪拌抵抗を嫌いオイルレベルを低めにしたりする人もいるようですが、ドライサンプなのでクランクケース内のオイル量はオイルポンプの突出量により決定されると思い、冷却面の優位性を考慮して、ほぼ規定量(オイルクーラーを付けた分増量)でオイル管理はしっかりしていたので三枚目の画像のクランクケース(洗浄後では無いです)のようにスラッジ一つ無い状態でした。
  3. 破損時のエンジン回転は約9000rpm〜10000rpm、4速全開でした。 異音を感じすぐにクラッチを切った。 カムチェーンが切れたかバルブの傘が落ちたかと思いました。 破損時の音から想像すると、これほどのトラブルと言う感じではなかったです。
(オーナーさん解析)
排気バルブが大きく曲がり吸入バルブには損傷もない事から、金属疲労によりビックエンドが排気工程の上死点付近で破損、排気バルブ、ヘッドとクラッシュ、破損し取り残されたコンロッド・ピストンのAssyを、1回転して来たクランクピンがを押す事によりスリーブを前方に押し、それに押されたバランサーが破損。 バラサーにねじり方向への変形が無い事からクランクがロックした事により生ずる慣性による破損ではなく破断したコンロッドがクランクピンに押されて前方に押し出されるかたちになり前方に向かい開放する形で破損したと考えています。 バランサーのウエイトにも強くコンロッドと干渉した後が残されています。 新エンジンを組み立てる時に位置関係を観察しながら再度検証して見ようと思います。
レギュレーション上交換可能部品や加工にもかなり制限がある為、十分なオイル突出量が確保できないとオイル通路の拡張もかえって油圧を下げかねないので手を付けられないのです。
やはり排気バルブ側でしたか。 そう、というのも吸気・圧縮・爆発というのは燃焼室にガス圧がかかっており、慣性駆動力を相殺しているのですが、排気工程でコンロッドを上死点に持ち上げる際は慣性力だけとなります。 この慣性力は何tという力であり、高回転で回せば加速度と共に慣性力も大きくなる。 コンロッドはクランクシャフトに固定され、圧縮と引っ張りを繰り返しますが左図の示すように大端部(ビックエンド)には縦に大きな力が働きます。 輪ゴムを縦に引っ張ると左右は内側に引き寄せられます。 これを「クローズイン」というのですが一体式のGooseのコンロッドの大端部の弱点でもあるようですね。

お客さまの貴重な経験談B
お客さま特に異常もなく乗っておりましたが、先日プラグが抜けず、プラグを折ってしまいました。
       逆タップでも抜けず、諦めてヘッド、シリンダーOHをついでにやる事にしました。
       ヘッド、ピストン、シリンダーはまだまだ使えそうだったのですが、
       シリンダーを外して見ると、こちらのページで良く書かれているコンロッドの変色が、
       そして、クランクのビッグエンド左右の焼け色が明らかに違います。

       たまにどちらかに焼け色が見られるクランクありますが?これは異常ですか?
       ガタも無く、スムーズな状態ではあるのですが
kamoオイルの流れが悪かったり、冷却が追いつかない場合の焼き付きが経験上多いです。
     折れたプラグの碍子の色も灰色っぽい感じだったりしますのでちゃんと見て燃焼に
     問題はないか確認しておきましょう。(焼き付き起因がシリンダー側かヘッド側かクランク側
     かその他か判断材料にもなります)
    左図のコンロッドは焼けも見られない。 クラッチ側のビックエンドが鈍い焼け色になる
    ことは直接障害を引き起こすことは少ないです。 しかし、高い熱が加わる機会があった
    証拠ですので環境を変えてやる必要があります。 全開走行が続くような運転をしている
    なら冷却が追いついていないし、オイルが指定(10W40) より硬いとか?フィルター類に
    詰まりはないか? 中古車ですと以前どんな乗り方をしていたか判り難いですが、
    判らなければ1から整備していけば良いです。 定期的にプラグを見て焼け色から燃焼を
    判断し記録しましょう。エンジンの温度が上がる根本的な問題に薄いキャブセッティング
    があります。空気が燃料より多く含まれれば発熱量は上がります。レスポンスは良いの
    ですがパワー感が足りない。 MJを見直すなど対策を取る事も重要です。
- お客さまプラグが折れるまではエンジン音も静かでした。 ゲージでの計測でコンロッドとベアリングに
       ガタは無かったので、この状態で使おうかな、とは考えています、焼き色がついた理由はおそらく、
       前オーナーから譲り受けた時、四インチスーパートラップが入っており、ディスクが一枚しか入って
       おらず、クローズエンドになっていたのが、プラグ焼きつきと、コンロッドに焼き色が入った、原因だと
       考えて、焼き色こそついた物の、ベアリングは無事なのかな?と、無理矢理安心して、このまま
       使用しようかな、と思います。

Gooseではないが、デトネーションを起こしていたのではないかと思うエンジン
プラグホールのネジ穴修理を承るとGooseのほとんどはねじ山が潰れている。これは作業状態が悪く、斜めにプラグをねじ込んでしまうケースが多い。 対策としては指で回るうちは緩める時もねじ込む時も素手で行うことだ。 取り付けるときは一度逆に回転させ、ネジが合う箇所を見つける方法もある。

同じ10mmのCプラグで修理を承るものがMonkey系である。 その多くが作業ミスでネジを潰したといったわけでなく、シリンダー温度が高くなりすぎ、アルミシリンダーヘッドのねじ面とプラグのネジ面が溶着し、抜けないプラグをムリに抜いた際ねじ山まで取れてしまったと思われるものが多い。 左の写真なんかは空冷フィンがプラグ周辺で割れていて痛々しい。(3/8のソケットセットにCプラグソケットを買い足して力いっぱい回したんじゃないかな? スピナーでもないと思うし、1/2では力が入るため、フィンまで折れない)

ボール盤とタップで基礎穴を掘り、エアーとパーツクリーナーで切子を飛ばす。
プラグホール修理時はドリル・タップを使用するため、切子が出るためバルブ他外さなければならない。(お願い:外せる方は依頼する前に外して置いてください)

クラウンやマフラー側、インマニ側ポートは綺麗な感じだったのはオーナーが磨いたんだろう。カーボンがない。 しかし、バルブを抜くと異常なカーボン量。 それもこびりついている。
シート面は中央付近は綺麗なものの排気側はカーボンが付着し、バルブが閉じても微妙に浮いていたと思われる。
排気バルブも鱗の様にカーボンが毛羽立っている。 排気側で不正点火していそうだ。 普通、経年でカーボン付着があっても、バルブの内側がこんなにデコボコしていない。 カーボン粒もあり、それが破裂しささくれている様だ。シート面も真っ黒であることが写真でも判るだろう。
排気ポート内・バルブを清掃し、すり合わせして組みあげた。
オーバーラップのせいだろうか、吸気バルブの内側もカーボンがたまっている。
バルブのシート面はちゃんと光っているように見えるだろ。 シート面は普通、これくらい綺麗なものだ。 しかし、吸気バルブにしてはカーボン付着が多い。正常とはいえない。
吸気バルブ・吸気ポートも磨き、摺り合わせも終わらせ、プラグを緩め規定トルク締めを3回テストし完了。

カーボンが溜まりヒートスポットとなると燃焼の3要素である「空気」・「燃料」だけで着火温度が低いガソリンでは爆発を起こす。 排気の力を利用し、新気が入ってくる。 ピストンは降りる方向だ。 そんな時に爆発が起きたりする。 それも排気ポート内で。 これがバルブが折れたりする原因だろう(上で載せたGooseのピストン) ピストンが折れなくてもタンブルフローやスワールで全体に充填され爆発するのでなくシリンダー壁面などで爆発するもんだからピストン全体に力がかからず、排気側に力が加わる、正規点火時期では燃料の一部がすでに燃えたため力ない爆発が起きる。 だからノッキングとして聞こえてくる。 整備士としては興味深く、聞いてみたいところだ。 プラグホール以上に作業時間がかかったためオーナーに説明した。 空冷でパワーがないため常に全開走行だったのかもしれないがエンジン音には気を配って頂きたい。 変な音がしていたというならいい経験となっただろう。
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