エンジンオイルがほとんど入っていない状態で走ってしまった車両
大阪方面の知人から、知り合いのGooseを直して欲しいと。 オーナーからも連絡を受け、H17.3.19 PM10に名古屋を出発 途中2時間仮眠を取り6時半ごろオーナーのお家付近(兵庫)に到着。 早く着きすぎたため、1件1件表札を見て回りオーナー宅発見! それでもまだ早いので車の中で仮眠・・・だいたい車両を受け取ったのがAM9:00くらい

車両は350スペシャルエディションで新車で男爵から購入。 整備は男爵に任せていたという。 始動はできるが低回転の安定(トルク?)がないという。 朝早かったため乗るのはやめておいた。 1発始動。不安定な回転は朝なのでエンジンが冷えているからかもしれない。 バイクカバーもなく屋根なし保管。 あちこち錆びてきている。 聞くとミッションが入りにくいというか、レバーが上がりっぱなしになったり、下がりっぱなしになったりして異変に気が付きミッションオイルを見たとのこと。 スタンドで立てた状態でオイルが入っているか確認したところ、オイルタンクに指を突っ込んでも入っている感じがしなかったらしい。(現在はオイルが補充されている) 別のバイク屋に持って行き見てもらったら「オイルが殆ど入っていなかったよ」と言われたらしい。 ミッションが入らなかったのは、結果的にコアースのバックステップレバーの油切れだった。 ミッションオイルが無いのを知らないでだいぶ走っていたと聞く。 事故にいたらくて本当に良かった。 (別のバイク屋も応急処置として、オイルを入れて帰らせたというのが私としては後日、結果を知ることとなり不満が残る)
依頼内容再確認
・通勤用なので早く直したい(3月中に何とかすると約束)
・エンジン交換(調査込み)
・前後ブレーキパット交換(ロッキード新品前後預かり)
・リアディスク交換(新品と思われるディスクローター預かり)
・ヨシムラサイクロンキャタライザータイプにマフラー交換(STDサイレンサー排気漏れあり。 サイクロン預かり)
・予算は10万円以下(送料込み)

その日のうちにシリンダーまで確認しようと考えていたが、自宅に帰れたのはPM8:00。 計算が大きくずれた。安く上げるためにと1号線を主にバイパスを使ったて京都・大阪・奈良・三重を通過し、愛知まで帰るのだがいるところが渋滞。 法事と連休の行楽帰りらしい。 車両をトランポから降ろすこともできず車内で写真撮影をした。
kamoの判断:まず、あの店で何が起きても私は驚かないといっておきます。 新車でもスズキがグリスを塗っていないエンジンやアクスルのシャフトは屋外保管ですと錆びているでしょう。 少し外す作業の困難が予想される。 エンジンオイルを入れなおして始動できているが、乗っていた人が感じるくらい著しく性能が落ちていると言うことはなんらか問題が出てきているだろう。 プラグの碍子は真っ白だったと聞く。 コンロッドが焼けている可能性が高いし、腰下の回転部の各軸受けやシリンダーヘッド周辺のカムなどいたるところが心配される。 酷く叩くような音はないため、開けてみないと判らないところだ。 いたるところのねじが錆びてきている。 抜けるうちに交換する必要があると感じた。 転倒などの傷はないようだ。 清掃ができていないのでブレーキキャリパーなどが心配。 エアクリーナーはSTDがついているスポンジを確認する必要がある。 吸気音が大きくなるが吸入効率を上げるため、吸入口を時間があれば拡張したい。 27日からの4連休のうちにお届けするよう予定している。profile

オーナーの自宅駐車場は屋根がないうえ、取りに行った日はカバーがかけられていなかった。 一番最後に販売されていたスペシャルエディションでも腐食のダメージが大きく、エンジンを下ろすときでも苦戦をしいられた。 今後のことも考え、予算を考えながら取り替える予定。 Gooseばかりをいじっているので何処にどんなボルトが填まっているかだいたい覚えているのだがあちこち間違った位置に填まっていたり、Goose用でないボルトが填まっていたりする。 サイドカバーの5mmねじは片方ない。(H17.3.22)

ドライブはDRようのように見える。 ドリブンはアファームのアルミだろう。 オーナーの走り方をタイヤから推測すると大分前に交換時期は過ぎている。 限界点と言ったところだ

350はブリーザータンクを別に持っているため、こんなにも汚れないと思うが…なにやらBOXの中に100ccほどだろうか水らしき物が出てきた。(乳化した液体も出ている) やはりおかしい。 ミッションオイルも水を多く含んだ時の色になっている。 エアクリーナーフィルターは使える状態に見えるからフィルタークリーナーで清掃してみる。

プラグは真っ白だったと言うオーナーの話から想像するとこの黒いプラグは焼き付きを示している。 シリンダーヘッドカバーを開けてもかなりの水分が見られる。
カムを外すと軸受け部が大分磨耗しているのがわかる。 (軸受け部に段差があるのが写真でも色の違いで判る…かな? ふちの辺り)
オイルが上がって燃えていることがヘッドのかぶった状態から判る。 吸気ポート内まで真っ黒だ。 始動してもらった時にデトネーションらしき音はなかった。(雨が続きPITへ入れた後エンジン始動はしていない) オイルが無い状態で走り続け、オイルが無いとわかった状態ですでにシリンダーは傷が多くできていた。 オイルを補充し思いっきり回したというオーナー…。 残念ながらオイルを足した時にはすでに焼きついていたと言える。 コンロッドがサーモンピンクに変色している。 これは使えないと断念。 18号エンジンと13号エンジンが350ccとして在庫があるが、どちらもそのまま販売できない。 18号は始動テストができていないので1度シリンダーまでOHが必要。 もうひとつは青島さんのだ。 ポート加工してあるため腰上だけは販売できない。(H17.23)

18号エンジンがまず使えるか調査する。 
OHして判ったのだが何度かエンジンを開けているようだ。 
(H17.3.26)
吸気ポートは綺麗・排気ポートは要清掃 カーボンはたまっている。バルブも合わせ要清掃 こちらは使える。磨耗がほぼない。
このクランクの色なら良いだろう。使おう! ピストンは清掃・リング・ピン・ガスケット交換 清掃・擦り合せ実施
PM10:00本日の作業はここで中断。 修理とOH、調査の必要なエンジンが並ぶ…。 後ろにも実は・・・
オーナーの焼きついたエンジンのピストンを外し、写真を撮ってみた。 深夜で多少色の違いがあるけど、ピストンでカバーされているところとコンロッドがむき出しになっているとことは色が違う。  熱がかかるところが白く変色していくのでクランク側のメタルがかなり高温になっていたのだろう。 クランク側はさらに白っぽい。 水はSBSで話してきたが多少に残るオイルが気化し蒸気となり、充満したことと、結露が原因じゃないか?と推定した。 実験した訳でもないが可能性は高い。

センタースタンドSWケーブルが潰れているのを発見! 交換 シャフトが回転しないと思ったら酷い錆。外すのに3時間くらいかかった。 貫通シャフトに交換 グリスを塗り直したと言っていたがすでに流れているし、一部は固形化している。 ブレーキ側も合わせグリス塗布。 ねじ止め剤も塗っていないためボルト類は付け直した。
リアのマスターのブーツが破れている。 交換 リアディスク新品とパット新品は預かっていたので交換した。
スプリングが入っていなかったので取り付け。 ピンは痩せていたので交換。 清掃実施。
キャリパーはインパクトで無理に閉めたのかねじ山が潰れている。 ピストンも戻らない。 キャリパーなり交換。 新品のパットに交換
本日の午後にはエンジンを積んでテスト走行と考えていたが、同上以外にも多くのトラブル(ねじが違う・ねじ山がなめている・ヨシムラマフラーもそのままではスイングアームに当たるため固定位置調整
チェーン及びスプロケットも交換

27日までの修理価格

品名 価格(¥)
トランスポーター運送費用(GAS代) 12000
エンジン(18号) 45000
シリンダーガスケット 525
シリンダーヘッドガスケット 1785
ピストンリング 3570
ピストンピン 1019
サークリップ(2ヶ) 210
オイルシール(9枚) 630
アルミワッシャー09168-08008 420
アルミワッシャーその外 240
ブレーキアルミワッシャー 160
貫通シャフト 2500
フロントブレーキキャリパー 6000
チェーンDID520S110L 6584
ブレーキフルード 400
中古スプロケット前後 500
ケミカル類(ねじロック,グリス類、潤滑油類,液体ガスケット) 1200
ミッションオイル 2500
ステンワイヤー 300
交換ボルト 3142
人件費(移動30時間,修理作業32時間) 37600
その外結構作業して直しましたが忘れたのでサービス 0
合計 126114
しかし、約束だったので10万円でOK!

一応、まだ、キャブセッティングが出ていないため、本日(H17.3.28)大阪あたりで降ろして実施します。
夜中のうちに大阪あたりまではした道で行きたいので


追加作業

テールランプ右球切れ。 交換 80
トップブリッジちょこっと清掃 0
三角板M6×10×6ヶ交換 138

AM2:00頃から出発9:30には大阪入り。ローソン171号(この時点でトランポの走行距離は165km)
にて整備実施。 


12:00頃にDS発見! キャブセットをここで実施することに決めた(外は雨のため、車内で実施)
朝一番に来たお客が珍しそうに見ていたが無視し調整。

追加整備

キャブセッティング(MJ#125→#135,NJ:上から3段目→4段目,PJ:#42.5→47.5 PS:微調整) MJ代:525
ピンク配線切り離し 0

気になる点使えるのだがホースが短くされている。 ガソリンホースはSTDの取り回しでは届かない。 多分、ひび割れた箇所だけ切り落としたのだろう。


14:00頃お客さまの自宅付近へ到着。 小雨の降る中試走行を実施。 ヨシムラのセッティングデータでは下が濃い模様。 しかし、これは焼きつかないための得策と考える。 ちなみに預かったときからスロットルワイヤーは引っかかっているもののダブルナットの締め込みはしていなかったのできっと今の車体に乗ったら以前のGooseとは別物と感じるだろう。 オーナーに直ったことを連絡し、朝昼兼ねて食事を・・・店がない(知らない)。 セブンイレブンで期間限定のデミカツだっけ? そんなのとあまぐり剥いちゃいましたが食べたいばかりに甘栗つきのSウーロン茶を購入。 うーん。贅沢したかったが…。 20時に帰宅されるというので自宅前に車を置いて寝る許可を頂寝ることにします。 明日は運送屋の手伝いがAM9:00からあるらしいので少しでも寝ておかないと体力が持たない。  ということでおやすみです。


約束の時間が近づき、結果をまとめることとした。 上に書いていないことで作業したことを思い出してみる.

内容 価格
リアマスターシリンダーカバー交換 1000
ヨシムラタンデムステップ左 500

受け渡し完了。 10万円+ハイカ1万円分+お土産までいただきました。 帰宅はAM3:58です。 9時から運送屋のお手伝いでピットへ戻ります。 なお、焼きついたエンジンですが腰下OHも後日紹介します。


3/30PM10:00頃 オーナーからオイルクーラー出口〜オイルタンクの間のホースがオイルでビタビタになっていると連絡がありました。 今回の作業で18号エンジンのオイルクーラーは外していないパーツ(焼きついたエンジンのオイルクーラーは水が入っているため、18号のオイルクーラーの方が状態が良いと考えたから)なのでよく話を聞くと金属部とゴムホースの継ぎ目の金具部分から噴射しているようなのです。 テスト時はまったく気が付かなかったので新しい故障とも考えられるが、ホースの取替えが必要。 4月1日夜に出発し、2日の朝修理する予定。 当然修理費は無料で行ないます。


オーナーから指摘を頂いたとおりオイルクーラー出口からオイルタンクのバイパスホースからの漏油であった。 事例としてはこれが初めてであり、出荷時に過信していたのが原因と考えている。  エンジンOH後の漏油チェックはいくら急ぎでも晴天の昼間に行うようして行きたい。 今回は悪い条件重なりすぎた。 販売したエンジンは中古であり、通勤に使う事を聞き、エンジンを積み替えし、腰下は急ぎのため開けない方針でオーナーの了解を受けていた。(腰下までのOHをすると時間がかかることを説明し、決断してもらった)ことでバイク屋で同じことをすれば新たな故障と考えられ別料金を請求されかねない。 消費者側に不利な話で私自身気に入らないため、クレーム処理ではなくアフターサービスという観点で作業をさせていただいた。 チェーン調整・プラグチェック・アクセルワイヤー交換を実施した。 不良パーツの回収も出来たし、オーナーの心配も軽減できたため良かったと思う。
漏油箇所の構造と推定原因・プラグチェック概要説明・キャブレター構造概要説明・クラッチワイヤー調整法説明もざっとしておいた。

エンジンもOHしてみた。
コンロッドやクランクシャフトはOHする前から焼けていることは確認できていたが、カウンターシャフトなど青っぽく光っている部分は焼けているギヤシャフトフォークは角が削れ、ミッションと接触する面は引っかいたような傷が見える。 クランクの分離も通常より硬かったり、簡単に抜けるバランサーなどプーラーなしでは外せないことから各ベアリングの焼きつきも見受けられた。 オイルなしでエンジンを回していたということが駆動する各部に影響を与えることは言うまでもないが、実際に見ることは稀な事で貴重なデーターとはなった。 エンジンがかかるからといって乗り続ければ事故にあっていたかもしれない。 このような悪い例を見た上で自分の整備を再確認して欲しい。
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