サスセッティング 
 GPレーサーのサスセッティングってさぞ、硬めなんだろう!なんて思いません?200psものパワーをリヤタイヤに伝えているのでさぞ固いだろう。 実際はそんな訳無いらしい。 動きがスムーズで底付きしない理想のサスがついているのだそうです。 GPマシーンだと前後のサスだけで何百万とするのでとても一般的とは思えないですよね。 お金が無いなりにサスを構ってみましょう。
 そもそも足周りをカタめるとはセットアップする(煮詰める)意味で、硬くする意味ではない。 フレームやスイングアームの剛性、各部の寸法に至るまで調整すること含んでいてファクトリーでもない我々には無理に近い。 スイングアームやサスの全長・フレーム剛性を無闇に変えるのはある意味マイナスだ。 フレームのしなりを妨げたり、アンチスクワットアングルの変化によるサスへの力の掛かり具合・乗車姿勢まで狂いが生じるからだ。 ノーマルサスを理解し、その特性が向上されるように調整・変更するべきだ。 「攻める走りをするから」といって、固定観念だけでプリロードを固めるのはナンセンスですよ。
まず、サスペンションを知りましょう。
 自分でも分かっているつもりで、結構判っていないのがサスペンション。 例えば、「フロントフォーク:テレスコピック式」などとサービスマニュアル諸元やパンフ・雑誌に書かれていますが、「具体的にどんなの?」って聞くと言葉では表現できない人が多々いるみたい。 海賊もので片目の望遠鏡を覗くシーンとか、アニメでもありますよね。 まさにあれ! テレスコープが語源なんですって。 ピント調整で望遠鏡を伸縮する感じと似てるでしょ。 さらに、細分類のチェリアーニ(チュリアーニ?ともいう。発音の違いかな?)式というのは、1番広く使われているはずなのに知られていない(トップブリッジとアンダーブラケットでアウターもしくは、インナーチューブを固定する方式です)。 知らなくとも運転は出来るのですが、名前すら知らないのが現状です。 ルーツを辿るより、やはりGooseやGP車両に用いられているチェリアーニ式について考えてみたい。
<フロントフォークのインナーチューブについて>
’70年代のGPマシーンで正立Φ35mm。 細いと思いますよね。 エンジン性能の向上により速くなり、フレームの剛性が上がっていくにつれ、コーナーリングフォースによりフロントフォークがよれたり、跳ねたり(チャタリングなど)するようになり、インナーチューブ径も太くなっていったのです。 フレーム剛性とフロントフォークの径には密接な関係があることが判ります。(フェザーヘッドとかダブルグレードルといったフレーム進化を知るのもサスセッティングには役立つと考えます。) Gooseは250ccがΦ41・350ccがΦ39ですね。  ロードモデルならΦ40あれば充分とされています。 350ccはΦ39…ここが気になりますよね。 ご存知のように倒立サスという物のメリットは剛性を上げられるとあちこちに書かれています。 じゃあ、何故? そう聞くと意外と答えが返ってきません。  倒立と正立、見比べるとアウターチューブとインナーチューブの割合が違いますよね。 さらに「テコの原理」を思い浮かべてください。支点・力点・作用点という奴です。 当然一番力がかかるのは、アクスルシャフトを軸(作用点)にして曲げが働くのが固定端(支点)のアンダーブラケットところですね(機械設計の観点からは曲げモーメント:集中荷重を受ける片持ちばりと同様の計算)。 350のアウターチューブはハンドル固定部でもΦ51。つまり大きな力がかかる部分が太い訳です。 それにより倒立は剛性が高いといっているのです。 あくまでもインナーチューブとアウターチューブの径が同一の場合倒立の方が剛性がかせぎやすいという意味での比較的表現と考えてください。 アウターチュウブが長いとか、インナーロッドが入っているとか素材が同じなら倒立が重くなるのは当然の理屈ですよね。コスト面とその車体にあった剛性を考えて350ccにはΦ39が付いている物と考えます。(Gooseが発売された’92年はレーサーレプリカブームからネイキッドモデルに人気が移っていた時代。 そのときのスズキといえばGSX-RにもRGV-γにもΦ39は使っていないのです。 Gooseのために作った倒立サスといえるでしょう。)

<まずはSTD状態で乗ってみる>
メーカーが作ったポジションは決して個人に合ったセッティングではないものの、かと云って、コンセプトに合わないでたらめなポジションではないので基準とするべきです。 中古車で改造やセッティングが変えてあった場合にはサービスマニュアルを参考に近づけて乗ることをお奨めします。 純正ポジションを基準に自分がどういう目的で、どういう走りをするか方向付けることが重要だと考えます。 そのためには目的の場所で純正のポジションのバイクを走らせ、体感したことから調整し、純正ポジションと比較することを繰り返すことが迷わない方法です。 例えば、「かも号でリアサスのセッティングはメーカー配送時のセッティングで丁度でした。」といったとします。 しかし、サスセッティングを聞いた人には合わなかった…そんなことがあっても何もおかしくないですよね。 フロントフォークのセッティングも車両姿勢も体重も走り方も走っている場所なども違うようでは同じになるほうがおかしいくらいです。 結局、人のデーターなど参考にしかならないのです。 あくまでも基準は純正車のセッティングです。 あえて懸け離れたセッティングから、理想のセッティングを探すこともないです。
<目的にあった車両姿勢>
Gooseは多くの方向性を持ったバイクです。 ジムカーナーをするなら、コース全体の目がいくように姿勢は起こした状態のが楽でしょうから、トップブリッジから交換し、アップハンにして、できるだけフロントの沈み込みを押さえるようにプリロードで調整できるように変更し、ホイルを太めに替えて旋回性を上げるなど(具体的には11号がそんな感じですね。)するのが良いでしょう。 それとは対照的になるのがロードレースモデルやレプリカに近づける方向性です。 軽く、剛性も高く、調整能力があり、パーツ点数が少ない。そういったものです。 乗りやすさも考えられたしなやかなSTDセッティングではふわふわした印象がありますから、路面追従性を考えフルボトムしない程度に良く動くサス(コーナーが多い(連続する)サーキットでは頭が振れるのを防ぐため、ジムカーナのように沈み込みの少ないサス)のほうが良いですね。 ライデイングポジションとしてはグリップを握った時、ひじが腿に当たらない程度が良いです。 

<キャスター角の調整>

フロントかリアの車高を25mm上下するとキャスター角はだいたい1度くらい変わることになります。 GooseはSTDならリアサスに車高調整がないため、フロントフォークの突き出しを調整すると良いでしょう。 2ストロークのレーサー:22.5度・レプリカ:24度。 しかし4ストロークでは重量バランスの違いから同じように調整すると切れ込むうえに直進安定性も悪くなる傾向がある。Goose:STD25度・サトゥルノ:24.3度)
ライディングポジションを見直す参照

<減衰力調整>
そもそもサスペンションというのはスプリングの力と減衰力で出来ている物です。 減衰力。 さてどんなものでしょう? ステアリングダンパーなんて減衰力だけ利用した物ですね。 そう、引っ張ったり、押したりすると反発する力です。 構造的には水鉄砲と同じ。 穴より大きい体積の物があり、その穴から押し出すのに反発する力です。 構造が分かれば何てことないでしょう。 減衰調整アジャスターがなくても減衰力は変えられます。 オイルの量・オイルの硬さを変えれば言い訳です。 オイルの一覧表を参照すると良いでしょう。 STDの油面量はエアー反力も考慮されているため量を多く入れれば減衰力が上がるわけではないので、まずは硬さだけを変えると良いですね。(250ccの正立には8番がSTDで入っています。カヤバの15番くらいまでで調整してみてください。

<簡単に出来るメンテナンス> 
フォークオイルは汚れるし、ガスケットとインナーチューブの摩擦面は潤滑されているため、微量だがオイルは減る。 それから、常に車重がフロントフォークに掛かっているため、エアーが抜けるのです。(フロントフォークのオイルを入れすぎた時と同じようにエアー反力減ります。 フロントフォークをのびた状態(浮かす等)にしてプラグを緩めるて締めるだけでも効果があったりします。)

調整の原点
1本になっているばねでも、バネレートが違うの知ってますね。今では2種類を組み合わせたり、バネレートの変化の無いサスを使うのは少なくなってます。しかし、すべてのサスに1G(バイク本体の荷重を支える力)・1G’(乗車した荷重)のリバウンドストロークと路面の軽い凹凸を吸収する1次コンプレッション、コーナーを攻めたときに底付きを抑える2次コンプレッションが存在し、それぞれの状態を把握する必要はあります。タイラップやモリブデングリスなどを用いて計測しておきましょう。
停止状態からスロットルをあけるとリア周りが一度持ち上がる。 走り出すと沈んでいくはずだ。 アインシュタインの定理からわかると思うが、接地したタイヤの摩擦とかかる力の方向、それを支える機構部にかかる力からくるものだ。 加速して、その荷重移動により今度はリア周りが沈み込む。これが“スクワット”です。 それに反発して踏ん張る力を“アンチスクワット”というのです。 タイヤの摩擦点からチェーン張力と接地点にかかる力の方向をベクトル表示化することで合力のかかり方が説明できる。 また、原理は違うが“リフト”(走行中にクラッチを切ってから、急にクラッチをつなげてやると前方に荷重が移動しリアが持ち上がる現象。これの反力が“アンチリフト”です)についてもベクトルで考えることが出来ます。 アンチスクワットアングルとはドライブスプロケット=スイングアームピボット=ドリブンスプロケットの3点を結んだ三角形を言うのだが青い線をごらんのように実際に線で結んでみると判りづらい。よって、赤のような三角形を考えるとよい。(この三角形をノーマルとあわせる)

エンジンを始動し、ギアを入れれば、ドライブスプロケットが反時計方向に回転する。チェーンを介してドリブンスプロケットに反時計方向の力が伝達されると同時に接地されたタイヤの慣性で摩擦の力が大きく働く。ここで1G’以上の力が加わり、スイングアームを持ち上げる訳だ。
アンチスクワットアングルを考える
アンチスクワットの調整が悪いことは何も車上姿勢が悪くなるだけでなく、旋回力の決め手となるトラクションとそれに追従するフロント周りのステアリングレスポンスに作用するため車体姿勢も悪くなり、接続するベアリングへの負担も大きくなる。いいかげんな設定は危険を伴うだけでなく、車体もだめにする。
図に書くと判りやすいだろう。アンチスクワットアングルの調整方法は2つある。サスペンションの車高調節を行う(サスペンション本体の長さを変えることも含む)こととドリブンスプロケットの位置を変えること。これにより1G・1G’時の車体の傾きも変わってくる。サスペンションを交換する時やスプロケの位置調整を行う時もこういったことを考えて行うのが理想的だ。しかし、これらはトルクが掛かっていない状態である。当然トルクが掛かればスイングアームを持ち上げ、サスペンションを縮めるわけだ。そこでスプリングの硬さや油圧の調整を行い、旋回性を高めることでよいアンチスクワットアングルを旋回中も保てるようにするわけだ。また、サスペンションの硬さによるライダーの感覚は次の通りだ。
プリロード調整
サスペンションを軟らかい設定にする サスペンションを硬い設定にする
  • ゆったりとした乗り心地
  • 運動性が軽快に感じる
  • サスの動きが鈍くなる
  • 車高が下がる
  • 安定性が大きくなる
  • 運動性が鈍くなる
  • 除々に重くなってくる
  • サスの動きが速くて乗りにくい
  • 跳ねる
  • サスの初期動作性が良くなる
  • 車高が上がる
  • 安定性が低くなる
  • 運動性がシャープになる
丁度いいのは硬からず、軟らかず、旋回性を高めるためにアンチスクワットアングルを極力良い状態に保つことである。そこで、まず、プリロードでスプリングの固さを調整しよう。【車種によってはまったくスプリングの調整が出来ない物もあります。(注意:無闇にスプリングを切るといった行為をお考えの方も見えるようですが、お勧めできません。サスだけではなく車体姿勢が悪くなります。】バネだけに頼れば、路面との追従性が悪くなったりします。伸び減衰調整がついているサスは最弱から除々に強くするように調整しましょう。
減衰力が弱い 減衰力が強い
  • 路面追従性が良くなる
  • ステア・レスポンスが良くなる
  • 落ち着いた安定感がある
  • アンダーステアっぽい
  • トラクションがかかりやすい
  • ふわつく
  • 大きく滑る
  • グリップが悪くなる
  • タイヤが跳ねる
  • オーバーステアっぽい
  • 重くなる
  • トラクションがかかりにくい
  • 硬く感じる

同じ車体でもこんなに姿勢が違う
 調整点に個人差が出てきておかしくない。 しかし、STDの調整位置には意味がある。
 こちらの2台はまったく同じ、オーリンズのリアショックを付けている。 かも号の車高調整は出荷時と同じ状態にセットされている。 これはアンチスクワットアングルを変えないためだ。 後ろの車両は車高調整により、前傾姿勢になっている。  ハンドル位置も比較して欲しい。 かも号はライダーがハンドルを握るために前傾するが、後ろの車両は車体が前傾している。  察しが良い人はもう判るだろう、フロントタイヤを軸にしてリアシートが傾き、フロントフォークは徐々に突き立った状態になる。 フロントフォークを効果的に動かすならば、キャスター角や突き出しもあまり変えないほうが良い。 さらに、後ろの車両のハンドルはSTDの位置にあるため、前傾なのに背筋がのび、フロントフォークの延長上に頭を位置するライディング姿勢をとるにはムリがある。
 STD250ccを間に挟み、少し斜面がある場所で並べてみると、かも号の車両姿勢はSTD250とほぼ変えていないことがお解かりだろう。 さらに、平らな位置に3台を移動し、タンクを基準にシート高の差を見るとシートを変更した分、STD250より、かも号のほうが乗車姿勢(重心)を低くすることが出来ている。 しかし、これは足の長さや座高・腕の長さやライディングによっては乗りにくい姿勢といえる。(90年代後期のRS125とポジションはほとんど変わらない) 出来るだけアンチスクワットアングルを変えないように自分に合ったポジションを作ることが重要である。 

<まず、テストコースを見つけよう。>
第一に他人に迷惑をかけない人通りの少ない、10〜30R・50〜100R程度のコーナーが複数あり、調整や休憩が出来るところ。(山・丘・サーキット等といった場所に限定されるし、そういった場所でもマナーを考えるべきである。)
<自分を守るための服装でテストしよう・無理な運転だと感じたらやめよう>
80q/hから急減速して、30Rをバンクして旋回し、クリッピングでスロットルを開ける…など連続して行ない、何処がどうだったかテストコースを図に書き、まとめる。 各箇所で感じたことを具体的に記す訳だ。 走ることだけに集中せずに行うので公道しか走っていない人には勝手が違うと思う。革つなぎ・フルフェイス・ブーツ・グローブは着用して行いたい。 集中できない場合は、安全を優先し、何度か行ない、各ポイントを埋めていく。
<テスト内容>
テストNo. ポイント 対策(1つ1つ行って結果を見る)
@ストレートエンドでブレーキング コーナー手前で80q/h程度からブレーキング Fフルボトムする
  • Fプリロードをかける
  • F圧側減衰を強 
Rフルボトムする
  • Rプリロードをかける
  • R圧側減衰を強
F跳ねる
  • Fプリロードを抜く
  • F圧側減衰を弱 
R跳ねる
  • Rプリロードを抜く
  • R圧側減衰を弱 
Aリーンの瞬間
  • ハンドルはこじらない
  • 後輪を軸にしたリアステアで
10〜30Rを50q/h以下でリーンする リーンする瞬間にフロントが切れ込む場合(ハンドリングがシャープすぎる)
  • FかR伸び減衰を弱
  • FかRプリロードを抜く
50〜100Rを50q/h以上でリーンする リーンする瞬間の曲がり初めが遅れる
  • R伸び減衰を強
  • FかRプリロードをかける
  • F伸び減衰を弱
Bバンクして旋回 旋回してみる 緩やかな高速コーナーで安定しない
  • FかR伸び減衰を強
  • R圧側減衰を強
ヘアピンなどの低速コーナーで振られてしまう
  • FかR伸び減衰を弱
  • R圧側減衰を弱
旋回中にフロントが小刻みに跳ねる
  • FかR伸び減衰を強
  • F油面を高
  • FとRプリロードをかける
Cコーナーから立ち上がり加速 クリッピングからハンクラあてて、立ち上がる 立ち上がり加速時に曲がれない
  • FかR伸び減衰を強
  • FかRプリロードをかける
全体的に コーナーリングで リアステアにしたい
  • Rプリロードをかける
  • FかR伸び減衰を弱
ハンドルが重い。シャープにした
  • Rプリロードをかける
  • F伸び減衰を強
  • R伸び減衰を弱

Goose250ccのお客さまからの問い合わせ
Q1
  1. フロントブレーキをかけて強くストロークさせると最後付近でコッンと引っかかるような感じがあります。
  2. 大きな段差を乗り越えた時の衝撃がコッコッとリジットな感じがあります。
同車種で乗り比べればわかるのでしょうが、あいにく見当たりませんので宜しくお願いします。
 A1:STDの状態から何か変えました? 転倒したことはあります? STDで正常なフォークではフルボトムしても「コッンと引っかかるような感じ」はないでしょう。 中古車を購入して判らない場合はホイルを外してインナーチューブを回転させ曲がりがないか確認してみてください。 2番目もSTDでは考えにくいです。 
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