ここ数年、2ストロークのレーサーレプリカやインライン4などからGooseに乗換、4ストロークの特徴やシングル自体の基本性能を勘違いしていないかな?と思う質問があり、改めて私もシングルと言う物を考えようと思ったわけです。 イメージがつかめるときっと乗り方も変わるんじゃないかなぁ? ひょっとして私のエンジンは調子が悪いの?と悩まれている方の勘違いも正せるのでは? そう感じた訳です。
特徴をあげてみる
「馬鹿にしているのか」と思わないでくださいね。 確かに4ストロークでは当たり前のことです。 しかし、Big Singleではすごく大きな影響を与えることなのですよ。
250ccや400ccから乗り換えたと仮定して比較してみる
2ストローク | 4ストローク | 備考 | ||
2気筒 | シングル | インライン4 | ||
点火 | 1回転に2回 | 2回転に1回 | 1回転に2回※ | ※インライン4では各シリンダーは2回転に1回でも4気筒同時の点火ではない |
振動対策 | 同軸にあるもうひとつのピストン | バランサー | 同軸にある2つのピストン | 本当は排気量が違えばバランサーの重さは変わるべきであるが… |
ピストンの大きさ | 基準 | 大きい | 小さい | 高速回転することお考えれば重いほど不利 |
クランクシャフトの長さ | 基準 | 短い | 長い | 長いほど不安定要素も高いのだが、ジャイロ効果も期待でき意外にインライン4の方がコーナー安定性がある。 |
クランクマス | 小さい物が多い | 小さい物が多い | 大きい物が多い | 回転が下がるとガクガクする:スナッチはクランクマスが小さいほど起き易くなる。 |
さぁ、簡単に書いたが、今度はGooseに乗り換えた人たちから具体的にどんな質問を受けたかと言うと
Q1:信号待ちをしているとエンジンが止まることがよくあります。 キャブセッティングもマフラーもノーマルです。 それ以外は普通に走れるんですけど…
A1:元々オフロードエンジンでクイックレスポンスは高いのがロードシングルの特徴で走り出しはミッションのつなぎ方しだいでとても軽快であるがそれがどうも「シングルは下のトルクがあるから・・・」といった誤解を招く。 確かに1回の爆発は同排気量でみれば大きいのだが圧縮上死点時は常に反発力が加わるシングルでは低回転時はスナッチがかかりやすい。 シングルはピストンが重い(大きい)ことからショートストロークに作られるため行程容積が増え、圧縮比も上がる。 Gooseはシングルの中でも圧縮が高くスナッチを起こしやすい車両であり、低回転(3000回転以下)では不安定になりやすい。 私が取っている対策は信号待ちなどではニュートラルにミッションを戻し、出来るだけ安定を保つことです。 クラッチをきっていてもフリクションはかかっています。 このほか低回転走行での不安定さを聞かれた方もみえましたね。 理屈は同じです。
お客さまからの補足 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
お客さま:「低速度でエンジンがストールする」を読ませて頂きました。
基本的なことですが改めて考えると自分がちゃんと理解していない事に
気付かされました。 でも、「もう少し判りやすい説明があるんじゃないかなぁ?」と
思ってこの数日自分なりに考えてみました。
それで出て来た説明はこんな感じ。 単気筒の燃焼行程は、 吸気 → 圧縮 → 燃焼 → 排気 この4行程のうち力を発生しているのは燃焼行程のみ。 残り3行程では燃焼行程で蓄えられたフライホイールの慣性力で回転を続けてる。 しかも吸気抵抗や圧縮抵抗で慣性力を消費しながら。 ところで慣性力は速度(この場合回転数)に比例するので、アイドリング時には 蓄えられる慣性力が非常に小さい。だから失火等で燃焼せず慣性力が補充されないと 抵抗が慣性力を使い果たしてストールする。 ところで4気筒の燃焼行程は、 1番気筒:燃焼 → 排気 → 吸気 → 圧縮 2番気筒:排気 → 吸気 → 圧縮 → 燃焼 3番気筒:圧縮 → 燃焼 → 排気 → 吸気 4番気筒:吸気 → 圧縮 → 燃焼 → 排気 (「燃焼」を色分けすると見やすいですね) 一目瞭然ですね。 常にどれかの気筒が燃焼していて慣性力のみで回転している時間が無い。 だからアイドリングでも単気筒より安定して回転できる。 どうでしょう? やはり単気筒は慣性のみで回転している行程が多い点が キーポイントだと思うのですが。 良かったら感想聞かせて下さい。 kamo:なるほど、 じゃあさらに色を付けてクランクシャフトの回転角を表記してみるともっとわかりやすくなるんじゃないかな。
Gooseで実験:マグネット側のプラグ(センターの丸い六角穴つき蓋)を外してクランクシャフトを直接回す。 プラグを外した状態とプラグを填めた状態で回転の重さを確認する。 「重いな」っと思う所が圧縮点。タペット調整時にでも確認しましょう。 応用:バッテリーに負担を掛けないエンジンスタートは?と聞くとまぁ、何となく判りますね。 エンジンを止めた状態でローギアに入れ押してみるとカクン・カクン・ズーって感じでリアタイヤが滑るところが来る。 そこが圧縮点だから、初めのカクンカクンはバルブリフトの力がかかるところ。 慣性力を最大限使うなら点火タイミングに近いところが理想だろう。 圧縮点を見つけたら少しバックし、ニュートラルに戻した後エンジン始動すると良いわけだ。 キック式の方で知っている方もいるのでは? キルスターターだと何も考えないでエンジン始動する人も多いけど、知っておいて損は無いでしょ。 |
クランク2回転で1回の爆発
さて、特徴を活かす為に知っておく必要が幾つかあることにお気付きの方もいるのではないでしょうか。 当たり前だと思うことを違う方向から理論的に説明するともっと判ると思うのです。 順に説明しましょう。 他のバイクに並ぶには回転数に対し爆発回数が少ない単気筒はそれだけ回転数を上げる必要があるということに着目すべきですね。 Goose開発時DR350のエンジンテストでこんなに回るのかと驚いたと書かれていますね。 単気筒はウェイトバランス的な問題から起こる振動でほとんどが1万回転も回らないのです。 STDGooseエンジンのバランスの良さが判ると思います。 速く走るには回転数を落とさないことが条件となります。 特にスタートから順に6速まで上げる時、回転数を大きく落とさない。 できればクラッレバーを使わずタイミングだけでミッションを入れられると性能を殺さない。 セッティングが出ているシングルはトルクの谷やピーキーな面がなく立ち上げることが可能なのです。回転数がさがればそれに見合った変速が必要なのでアクセルワークは優しく緩やかな動きが必要だかミッションの選択は積極的に行なうほど速く走れる。 シングルが乗り手を選ぶと言うのだったら、以前乗ってきたオーナーの感覚を崩す乗り方となること。 2ストやマルチの感覚で「もう少し引っ張ってからチェンジだ!」と思っていると、チェンジの早いSTDのGooseオーナーに置いて行かれてしまう。 一人で乗っている分には判らないかもしれないがGooseが集まって走るとはっきり現われる。 アレは排気量が大きいから、改造してあるからと単純に片付けてしまう人もいるが実は真直ぐ走るだけでも判っていない人と判っている人では大きな差がある。 「出だしから違う」と言う人がいるが私はアルミのドリブンスプロケットが歪まないよう実は出だしのアクセル開度はあえてゆっくり開けている。 速いとすればそれは回転数を落とさず、チェーンの引っ張り状態を変速時もストレスなく行なうことを考え極力瞬間に行なおうとしているからです。 アクセルはゆっくり、立ち上がったらキープ。 ミッションは積極的にというのが大きく違いますね。 同じ排気量のインライン4やツインと比べ4倍若しくは2倍の爆発力があるのですから出だしは優勢なのです。 チェンジが下手だと何時までたっても車両性能が活かされないため遅いのです。 よってシフトチェンジを減らして快適走行と考える人にはまるで向いていない。 操作を楽しめる人の乗り物というと聞こえが良いが…(極論:簡単に誰でも速く走れない面倒な車体ですな。 試乗して感想を言うと試乗した人自体が評価されてしまう場合がたたある。)
開発コストが掛かりすぎるのにニーズが伴わないためオフロードエンジンを流用している
色々な雑誌で理想のシングルというのを取り上げて紹介してますね。 しかし、殆んどのシングルはオフロードのエンジンの流用でGooseも同じです。 ではロードで使うシングルエンジンの理想って何? そう聞くとなかなか答えが返ってこなかったりするのですが簡単に言うと車体の重心をさげ、車両を低く保てる車体ですかね。 簡単にいうとモンキーみたいなシリンダーがエンジンの前にあるようなものを指すことになるでしょう。 多気筒エンジンでは重心が前に行きフロントフォークへのかかる負担や全体のバランスも悪くなるのに対し単気筒では比較的軽く可能な移動なのです。 縦に長いオフロードエンジンはフレーム内に収めた時どうしても車体を大きくしてしまうのです。 フレームの上に乗るガソリンタンクの容量を考えるとスポイルして運転しずらくなったり、する訳です。 Gooseは比較的足つきも良いのですが体の小さい方にはタンクが大きく、ハンドルが遠くに感じるかもしれません。 Gooseのエンジンが横置きのタイプでしたらミニバイク載っているような感覚に近い物で姿勢はもっと楽だったと思います。 車高が下がることで全面面積も低くなり、空気抵抗も抑えられるでしょう。 メーカーから見れば需要の期待が持てない中間排気量シングルにそこまで投資できないというのが現実でしょうね。 雑誌でメーカー質問する記事を見かけますがさめた答えしか返って来ません。 作る側として作りたくても会社であるがゆえ、利益はなくてはならないというのが本音でしょうけど。 MOTOGPで単気筒のクラスができれば話は別でしょうね。 近代のモタードやオフロードのエンジンは基本的な改良とはいえ、目覚しい発展が見受けられます。 その技術が活かされ、ロードモデルが販売されれば相当面白い物が出てくるだろうとは誰でも思うことですね。
クランクシャフトが短い
クランクシャフトが短いと言うことがすごく大きな違いですね。 エンジン下部に位置するクランクシャフトが長いと言うことは車体を寝かした時に路面に当たらないようにするため、エンジンの位置を高くする必要があるのです。 すると車体の中で一番重いエンジン持ち上がることで重心が上に位置するのです。 車両を前に走らせるなら重心は低くするのが有効だと言うことはドラックレーサーのマシーンをみるとよく判りますね。 リアタイヤを回すのと重心位置との角度は大変重要で、重心が高くなればジャックナイフやウイリーしやすい車体になり、前に進むというよりも前方上方に力が働く格好になるのです。 車重の軽いGooseでは極力重心を下げるようセットしたいと言う気持ちがあるものbの、路面とに間隔が狭くなると今度はフルバンクで路面との接触の危険性が出てくるのです。 STDサスでは十分な能力が発揮できないのが現実で、スピードを落とさずコーナーに侵入するために車高を下げるためにはお金はかかるという結果になってしまいました(前後サスペンションの変更やピロクッションレバー作成などで検証ずみ) もう一つ忘れてならないことがジャイロ効果。 クランクシャフトが長いほどジャイロ効果は働き、回り始めると意外なほど曲がれる。 GSX-R1100などハンドル切れ角が無いのに良く曲がると思うのはジャイロ効果が有効的に活用できている人。 だから低速コーナーが続いてペースダウンすると極端に曲がりにくくなる。 それがGooseには少ない。 もちろんジャイロ効果を無視することはないがストレートでもコーナーでも大きな速度変化でも素直に感じられるのはその性質が大きい。
ピストンが1つ大きいものがついている
なんともデメリットを多く感じる
1:死点を行き来する勢いを殺すためのバランサが必要となり、パワーロス(摩擦によるフリクションロス)、重量化、高コスト化となる
2:吸気・排気の音が大きくなる
3:シリンダー内の温度が吸気側と排気側で差が出てくる
4:バルブを大きくしても隙間が大きく空くため、同排気量マルチに比べ吸入量に差が出る
ただメリットだって当然ある
1:1発の爆発が大きい
2:多気筒の様なピストンの重さなど均等にする必要性が無い
3:多気筒にくらべコストは安い
積極的にミッションチェンジが必要
排気量が同じ多気筒マシンと並走していたとする。 多気筒マシーン前方車両を抜くため追い越し車線へスロットル開度だけで入ったとする。 それに単気筒マシーンが付いていく時、1回の爆発が大きい単気筒の方が一見有利に思えるかもしれないが実際はそう感じなかったはずである。 マルチのように連続的にトルクを生むものに加速性のは気筒数だけの違いの場合適わないのだ。 マルチだと割りとチェンジを我慢するところはシングルは迷わずチェンジすべきであるところになる。 クランクマスが小さい分ジャイロ効果が小さい。 爆発も大きければ、負圧も大きい。 回転の落ち込みも大きいんだ。 これを逆手にとって乗れないとシングルは大変難しい乗り物になる。 回転を落としたくなければブレーキ中もリアタイヤにはトラクションが常にかかる位くらい開けておく事だ。 タイトコーナーではエンブレもを有効に使いブレーキ回数を極端に減らすことだってできる。 シャフトの捩じれは長く遠いほど大きくなるからマルチなどで急なミッションチェンジをするのは極力避けたいがシングルではその負担が低くできる。