フロントフォーク OH・組立て   
特殊工具さえあれば、誰でもばらせる倒立ホーク。 しかし、組上げるのはデリケートです。 シールに傷を付けたら即“パー”ですから。 特殊工具も揃えると数万円しますし、一般ユーザーには難しい。 エア抜きやオイルの計測もコツがいるしスプリングの方向なども… パーツ代も一通り交換すれば1万円程度する。 SBS工賃もすごく高いとなれば、依頼があれば受けてもいいかな?っと思える。 ここでは10年間まったくオイル交換されなかったフロントフォークをオーバーホールし、その仕組みと、メンテナンスの必要性を見ていこうと思います。
左がGoose用右がγ23A用です。 明らかにGooseの方が簡単ですね。 サービスマニュアルにあわせ番号をふりました。

オーバーホール

1.
基本的に倒立ホークの中身は変わらないので、面倒なγ23Aのオーバーホールを紹介しますね。
0.キャップ(はGoose350もRGV-γも23mmKokenソケットが丁度填るのでトルク管理も可能だ。)を外す。 250のようにスプリングの反力によって飛び出たりはしないので軽く回る。 通常の場合は車両に固定されている状態で軽くゆるめておくと良い。)

1.アウターチューブを下ろすとスペーサーが出てくる。 スペーサーには対称に2つの穴が開いているそこに一つ目の特殊工具(09940-94930 フロントフォークスペーサーホルダー)を固定する。 (減衰のあるγには特殊工具09940-94921ストッパープレートが必要でアルミ板を加工して作成したが、良く考えたらYZ250で使用していた特殊工具01434が使えたのを後から思い出した。 正直言ってこの工具はヤマハの工具の方がしっかりしている。 しかし、ちょっと挟む程度なら何でもいいといえばスズキの考え方に間違いはないと思う。)

Gooseの場合キャップとインナーロッドを外し(右ネジ)、固定したフロントフォークスペーサーホルダーを押し下げ、スプリングシートストッパーを外す。γ23Aの場合は左の1番上の写真のように薄めのスパナをかませキャップとインナーロッドを外す。

2.γ23Aはアジャスターロッドが一緒に外れて出てくる。)
2.
3.
3.オイルを抜くのだが3枚目の写真を見ていただきたい。 もともと透明(若干黄色いくらい)のフォークオイルがここまで汚れている。(茶褐色で透明度はほぼ無い。)10年交換しないとこんなものなのかと思う。 個人的にはまめに交換する方なのでこんな色ははじめてだ。) スラッジが出ている。
4.
4.底の部分のボルトを外し、インナーロッドを抜く。
5.
5.ダストシールとストッパーリングを外し、アウターチューブとインナーチューブを圧縮状態から平行に引っ張り(数回実施)、アウターチューブとインナーチューブを分離する。 インナーチューブの中から出てきたオイルは見たからに汚れている。 
6.
6.これが抜いたインナーチューブの先端です。 左の黒いのがスライドブッシュ(スライドメタル)、茶色っぽく見えるのがガイドブッシュ(ガイドメタル:Goose350SMの8-11の図はMとHが逆で8-14を参照してください。RGV-23AのSMの8-23Eピストンはガイドブッシュです。 インナーロッド内のピストンと間違う可能性があるので名称は正しく覚えた方がいいです。こちらは8-20の図を参照してください。)、金色に見える薄いのがシールスペーサー(ワッシャー)、鉄のような色をしてゴムコートされたものがオイルシール。 これだけ填っている。 OHして必ず交換すべきなのはシールスペーサー以外の3つです。
7.
7.インナーロッドと外した消耗品類です。 インナーロッドはかしめがあるので通常はここまでがOHです。 

苦労しがちな箇所
万力でインナーチューブを固定し、Tレンでキャップスクリューは外すことが出来る。
しかし、ワッシャーが潰れ外れてこないことが時折ある。 ガスケットリムーバ
(L字やフックタイプ)を使用すれば外れるのだが、トルクをかけすぎたか、純正と
異なるサイズのワッシャーを使用したかなどでガスケットリムーバが壊れてしまう
くらい固着してしまっている場合、タップを入れて外れる場合がある。

計測と組み立てを順次更新する予定です。 オイルを何にするか検討中です。


計測

消耗品データ計測(価格は参考です。価格表の方が比較的新しい情報です)
- 10年OHされていないGoose350 Goose350
 OH後(消耗品新品)
サーキットで使っていた(漏油あり)'96 RGV250γspVJ23A '96 RGV250γspVJ23A
 OH後(消耗品新品)
フォークオイル 黒く、スラッジも出ている モチュール 半透明茶褐色 スラッジも出ている PJ1のPRO-01をベースなのでスカーレット(赤)
(mm) 外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ
オイルシール(VJ23A)
52.0 39.0 5.95 52.2 37.75 7.0 54.0 41.0 6.35 54.3 40.9 6.8
51153-19D00 51153-08D00
2ヶ:1420円 2ヶ:1420円
スライドブッシュ(VJ23A)
外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ
39.85 38.0 1.0 39.65 37.6 1.0 41.75 40.0 1.0 41.75 39.9 1.0
51121-19D00 51121-42E00
2ヶ:1220円 2ヶ:1260円
ガイドブッシュ(VJ23A)
外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ 外径 内径 厚さ
43.1 39.25 1.95 43.25 38.7 2.0 45.15 41.35 2.0 45.35 41.35 2.0
51152-19D00 51152-08D00
2ヶ:1060円 2ヶ:860円
ダストシール
亀裂があるものは交換したほうが良い
51173-19D00 51173-15D00
2ヶ:820円 2ヶ:840円
スプリング L:382mm - L:248mm -
オイルが\4000-としてだいたいOHが¥8460-(税込み¥8883-)となります。
細かな縦傷の補修
 購入時に、気付かなかったが、左右共にインナーチューブに爪が引っかかる程度の縦溝ができている。 そこそこ信用のおけそうなSS店だったが、オイルが垂れていたうえにこれでは¥55000-は取りすぎだろう。 Vブロックとダイヤルゲージで曲がりはほぼなしと判断できた。 
 できれば旋盤で均等に削っていきたいのだが、そんな贅沢な設備も無く、手で磨くことに…

(最近はポリッシャーを使用している:均等に磨けるので
爪が引っかからない縦線なら消せる)
 判らないくらいになりましたね。 左右のインナーチューブを磨き、せっかくの休日が終わってしまいました。 
 インナーチューブ内も大変汚れていた。 真っ白のウエスが黒のまだらになって出てきます。

組み立て

 何より神経を使うのがオイルシールの取り付け、写真はオイルシールの内側に傷が付かないようインナーチューブに調理用ラップを巻きつけて保護している状態です。 ビニール袋より丈夫で貼り付きヨレが少ないため良いです。
こんな感じに傷をつけないようにはめ込む。
 ガイドブッシュをシールスペーサーごしに打ち込み、さらにオイルシールを打ち込みます。 その時使うのがフォークオイルシールインストローラー(09940-52880)とハンマ(09941-53610)です。 オイルシールが真直ぐ入らなければ何のための交換か判らない。 これは買っておきたい。(しかし高い)
 インナーロッドを固定し(ダンパーボルトのガスケットも交換する)、フォークオイル(マイクロロンやEPLをブレンドする場合、この測量の時点で混ぜておく)をインナーチューブに注ぐ。
 特殊工具インナーロッドホルダー(09940-52841)をインナーロッドに固定する。 私はインナーロッドホルダーは買わずにGoose350のインナーロッドを固定し代用している。
 アウターチューブを少し持ち上げ、インナーロッドを数十回ストロークさせエア抜きする。 そして少し放置する。 この間にスプリングの長さを調べたり、オイルレベルゲージなどを用意しておく。
 5分以上放置した後、再確認でゆっくりインナーロッドをストロークさせ気泡が出ないことを確認する。

 アウターチューブを最下位まで下ろし、スプリングが入っていない状態でオイルレベルゲージをセットし、余分なオイルを吸い取る。
 OHと逆の手順で組み込む。(ストッパープレートの代わりに今度はYZ250で使用していたヤマハの特殊工具01434を使ってみた。)

 キャップを固定し、アウターチューブとキャップを締め付ければ完成です。

Goose用倒立で知っておきたいこと
 サービスマニュアルP8-18にロックナットの締込み高さAを14±0.5mmとされている。 初期設定は14mm丁度でした。(OH時実測) ロックナットを締めこむと14.8〜14.95mm程度締込める(個々に差がある)。 締めこめばプリロードをかけられる訳だ。 アルミキャップは16.5mm締められるため固定に問題ない。 最大14.95mmかけられる。 昔は正立サスに500円玉くらいのワッシャーを入れて固くした物だが、ナットを締めればいいのだからさらに調整が楽だ。 ストローク長は当然短くなるが1mm程度。 誤差だ。 微妙にキャスター角が縮まるが問題ない。 少しでも固くしたいというならお奨めかな? 不安なら、無難はメーカー指定+0.5mmですかね。 1mmで変わるのと思う人もやってみてください(笑)
スプリングの入れる方向:サービスマニュアルが判りにくいという人も多いでしょう。  倒立(350)はばねのピッチが細かい方が下。正立(250)はその逆。
これが10年物(距離として2万q程度)のフォークオイル。 純正はSS8が入っているはずだ。 SS8はたしか黄味がかかった透明。 それがここまで黒くなる。 私の場合オイル性能の向上を図り良い物を選ぶから、良くなって当たり前なのだが、ここまで汚れているとSS8を入れても確実に良くなったと感じるだろう。 誰が乗っても判る。 交換してみませんか?
フロントフォークオイル交換依頼
工賃は¥5000円で交換するパーツの価格はH16.1価格でこんな感じです。
51148-36011 ガスケット 2 \260
51121-19D00 ブッシュスライド 2 \1,220
51152-19D00 ガイドブッシュ 2 \1,000
51153-19D00 シール,オイル 2 \1,420
51173-19D00 シール,ダスト 2 \820
モチュールFACTORY LINE 2.5W5W 倒立用 \3,800
税込み \8,710
350倒立サスのオリフィスをパイプカッターで切ってみた
お客さまからの問い合わせ
250純正のフロントフォーク突き出し量を教えて頂けないでしょうか?という質問を頂いたので350も紹介しておきます。 サービスマニュアル8-19に在るとおり、“インナーチューブ上端(キャップの高さを除く)とアッパーブラケット(トップブリッジ)上面の間の寸法を14mmにして組立てる”とあります。

お客さまから参考価格情報(H23.7.2)
SBSでのGoose350FフォークO/H工賃 ¥19,000-

関連リンク
トラブルシューティング アウターチューブからインナーチューブが抜けない
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